治験におけるローカル試験とグローバル試験の違いを徹底解説!

2022年3月22日

どうも、はるきちです。

私は以前CROでCRA、チームリーダーをしており、現職の製薬メーカーではオンコロジー領域のStudy Managerをしています。

ここ最近は、外資系の製薬メーカーではグローバル試験が主流になっていて、弊社の中でも9割近い試験がグローバル試験です。

私は、今はローカル試験とグローバル試験の両方を担当していますので、それぞれ違った面白みがあり、日々奮闘しています。

今日は、ローカル試験とグローバル試験の違いを解説したいと思います。

ローカル試験とグローバル試験の違い

まず、ローカル試験とグローバル試験は、一般的には以下のように定義されています。

  • ローカル試験:日本国内のみで行う試験。Local Study、日本国内試験と表記される場合もある。
  • グローバル試験:世界で同時に実施される試験。Global Study、国際共同試験と表記される場合もある。日本は、参加国のうちの1か国という位置づけになる。


私がCRAとしてデビューした2000年代は、ローカル試験が主流で、各国で治験を実施していました。

そのため、US・EUで承認されている薬剤であっても、日本ではまだ治験が実施されていない薬がたくさんあり、ドラッグラグが問題となっていました。

そのドラッグラグを解消すべく、グローバル試験の数が昨今では増加傾向にあります。

令和元年に厚生労働省から出された資料によると、平成30年時点で全試験に占めるグローバル試験の割合は50.9%になっていて、半分強の試験がグローバル試験です。


グローバル試験を行い、医薬品を世界で同時開発を行うことにより、日本もUS・EUと同じぐらいのタイミング(または数か月遅れ)で承認申請することができるようになり、医薬品のドラッグラグが飛躍的に解消されてきています。

グローバル試験により日本の医薬品開発は劇的に進化したと言えると思いますが、実際にCRAとして仕事をする際の、ローカル試験とグローバル試験の違いを見ていきたいと思います。

一般的に言われている違いを以下の表に纏めていますが、会社によっては多少違いがあります。

例えば、ローカル試験の場合は日本に責任者がいることが多いと思いますが、外資系製薬メーカーではローカル試験でも海外に責任者がいる場合もあります。

はるきち

GCPは”Good Clinical Practice”の略で、治験を実施するために守らなければいけないルールです。その中で”J-GCP”と”ICH-GCP”の2つがありますが、前者は日本のみで運用されているルールで、後者は日米欧の3極で合意されているルールです。

ローカル試験のメリットとデメリット

まずは、ローカル試験のメリットとデメリットについて見ていきたいと思います。

メリット

一番のメリットは、日本でのみ試験を実施しているため、日本で試験をManageできる点だと思います。

グローバル試験は基本的にUSやEUに責任者がいますので、日本は参加国のうちの1つという位置づけになり、日本から試験全体をManageすることができません。

その一方、ローカル試験は参加国が日本のみですので、日本で試験を運営できる点が最大のメリットだと思います。

製薬メーカー勤務のStudy Managerで、ローカル試験の責任者を日本に設置している会社であれば、ローカル試験は非常に面白いと思います。

その一方で、製薬メーカーのCRA、CROのチームリーダー・CRAにとっては、ローカル試験はあまりメリットがないように感じます。

はるきち

製薬メーカーのStudy Managerにとっては、自分で試験をManageできるという意味では、ローカル試験は非常に面白いですね!

デメリット

デメリットは、グローバル試験に比べ、英語の使用頻度が少ない点です。

会社によっては、ローカル試験では全く英語を使わないケースもあります。

ローカル試験を経験することのメリット・デメリット
【メリット】
-日本で試験をManageできる(製薬メーカーのStudy Manager)

【デメリット】
-グローバル試験に比べ、英語の使用頻度が低い傾向にある

グローバル試験のメリットとデメリット

次に、グローバル試験のメリットとデメリットを見ていきたいと思います。

グローバル試験は世界で同時に実施されている試験であり、日本はその中の1か国にすぎません。

そのため、基本的に試験の責任者はUSやEUにいて、海外から日本に対して指示が来ることが一般的となっています。

メリット

グローバル試験を担当することの一番のメリットは、ローカル試験と比べた場合に、英語の使用頻度が上がることだと思います。

英語のメールはもちろん多いですし、海外のメンバーとのミーティングも定期的に実施していますので、英語力を向上させる環境としては、非常に良い環境だと思います。

もう1点のメリットは、海外の人とも仕事をすることにより、日本人以外の文化に触れることができる点です。

日本人はしっかりと責任をもって仕事をする人が多いですが、海外の人はいい加減な人も実際に多いです。

日本人以外とも一緒に仕事をしたことがある、という経験を得られるのが、グローバル試験の面白みでもあると思います。

はるきち

仕事中にお金を貰いながら英語の勉強ができるなんて、最高ですね!

デメリット

グローバル試験のデメリットは大きく分けて2つあり、まず1つ目は海外のメンバーとのミーティングは日本時間の朝早い時間や夜遅い時間に設定されることが多いです。

時間の設定はUSやEUの就業時間を軸に考えられていますので、必然的に日本では朝早い時間か夜遅い時間になります。

あともう1点のデメリットは、日本は参加国の1つに過ぎませんので、試験全体の決定権は基本的に日本にはありません。

多くの外資系製薬メーカーでは、グローバルの言いなりになるケースが多いと思います。

Protocolの解釈などは、事細かにグローバルに確認する必要があり、ローカル試験とは温度感が異なります。

グローバル試験を経験することのメリット・デメリット
【メリット】
-英語の使用頻度が高い
-海外のメンバーと仕事をすることにより、違う文化を体感できる

【デメリット】
-海外のメンバーとのミーティングが日本時間の朝早い時間や夜遅い時間に開催されることが多い
-日本は参加国のうちの1つであるため、グローバルの言いなりになるケースが多い

転職市場におけるローカル試験とグローバル試験

ローカル試験とグローバル試験ではそれぞれメリットとデメリットがありますので、一番良いのは両方とも担当することができ、その違いを経験できることだと思います。

では、転職市場におけるローカル試験とグローバル試験の違いですが、私は今までにグローバル試験の経験を明確に応募要件に記載した求人をたくさん見てきましたが、逆にローカル試験の経験を求めている求人は見たことがありません。

そのため、転職市場における市場価値としては、グローバル試験を経験している方が転職に有利に働くと言えます。

日本がグローバル試験から排除される日がくるかもしれない

第18回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議2018で「日本がグローバル試験から排除される日」という演題が発表されました。

私もスライドを拝見しましたが、非常に興味深い内容で、是非皆さんも目を通して欲しいと思います。

日本は、製薬メーカーと医療機関の関係性に独特の慣習があり、他国に比べCRA一人あたりの担当施設数が少なく、かつ訪問回数が多いことが特徴です。

今までは日本が魅力的なマーケットであることより、ある程度グローバルは日本の慣習に理解を示していた部分があると思いますが、現在は毎年薬価改定を行い、日本の医薬市場はマイナス成長です。

投資先としての魅力も年々下がっていることより、グローバル試験から排除される日がそのうち来るかもしれません。

まとめ

ローカル試験とグローバル試験のそれぞれの違いを見てきましたが、それぞれの試験でメリットとデメリットがあります。

ローカル試験は自分で試験を運営できる面白さがある一方で、CROにお勤めの方にとってはグローバル試験の方がメリットが大きいよう気がします。

少し前まではグローバル試験の経験が重宝されていたと思いますが、最近ではグローバル試験が当たり前になっています。

そのため、現在勤務の会社でグローバル試験を全くやっていない場合は、今後のキャリアを考え、転職も視野に入れた方が良いでしょう。

では!

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