Biogen(バイオジェン)の将来性や年収について徹底解説
どうも、はるきちです。
私は以前CROでCRA、チームリーダーを担当しており、現在は外資系製薬メーカーでオンコロジー領域のStudy Managerを担当しています。
今日は外資系製薬メーカーのBiogen(バイオジェン)の将来性や年収について書いてみたいと思います。
バイオジェンと言えば、アデュカヌマブがFDAから迅速承認を取得したものの、その後苦戦が続いていますね。
バイオジェンは新卒採用はしておらず、全職種において中途採用で人員を補充しています。
モニタリングは、某大手外資系CROとPreferred契約をしており、全てCROに委託しています。
そのため、当社にはCRAが一人もおりません。
私個人としては、当社に対しては、
- パイプラインが豊富であり、将来性が豊かな会社である
- ここ数年は我慢の年になる
と感じています。
現状を踏まえて、その理由を考察してみたいと思います。
バイオジェンとは
会社名 | バイオジェン・ジャパン株式会社 |
本社 | 〒103-0027 東京都中央区日本橋 1-4-1 日本橋一丁目三井ビルディング 14階 |
バイオジェンは、アメリカに本社を置く外資系製薬メーカーです。
当社では、以下の4つを重点領域として設定しています。
- Neurology
- Specialized Immunology
- Biosimilars
- Digital Health
バイオジェンと言えば、CNSに強みを持つイメージがありますが、以前はオンコロジー領域の開発・商業化も行っていました。
2010年代の前半から、CNS、免疫系、血友病にフォーカスしています。
2015年には、社名を『バイオジェン・アイデック』から現在の『バイオジェン』に変更しています。
2016年には、血友病事業を分社化しましたが(新会社名:バイオベラティブ)、バイオベラティブはその後サノフィに買収されています。
真偽のほどは定かではありませんが、バイオジェンは、以前から買収の噂が絶えないことで有名ですね。
バイオジェン・ジャパン株式会社の本社は、コレド日本橋に入っています。
地下鉄 日本橋駅とコレド日本橋は地下で繋がっていますので、雨の日も濡れずにオフィスまで行くことができます。
売上推移
2018~2021年の決算資料に基づき、当社の売上、営業利益、営業利益率、最終利益を以下の表に纏めています。
(2022年の予想については、2021年の”Financial Results and Business Update”より引用)
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022(予想) | |
---|---|---|---|---|---|
売上 (Dollars in Millions) | 13,452 | 14,3777 | 13,444 | 10,981 | 9,700~10,000 |
売上 *2022/4/1時点の1$=122円で日本円に換算 | 1兆6,494億円 | 1兆7,539億円 | 1兆6,401億円 | 1兆3,396億円 | ー |
営業利益 (Dollars in Millions) | 5,888 | 7,042 | 4,550 | 2,840 | ー |
営業利益率 | 43.7% | 48.9% | 33.8% | 25.8% | ー |
最終利益 (Dollars in Millions) | 4,430 | 5,885 | 4,000 | 1,556 | ー |
2021年単体だけで見ると、本業の儲けを表す営業利益率も25.8%であることより、かなり儲かっていると言えます。
2018年~2020年の営業利益率は30~40%台であり、他メーカーでは無し得ないぐらいの驚異的な数字を叩き出しています。
その一方で、全ての数値において、2019年の決算内容をピークに下落に転じており、2022年の売上の予想は、2021年を更に下回っています。
2021年の決算資料より、当社製品の売上の画像を以下に貼付しています。
その中で、売上ベスト3は、
- フマル酸塩(テクフィデラとVUMERITY)
- タイサブリ
- スピンラザ
となっています。
当社の決算指標が近年悪化している一番の原因は、屋台骨のテクフィデラ(多発性硬化症の治療薬)の特許侵害を争ったマイラン社との訴訟に敗訴したことにより、テクフィデラが一気に後発品に浸食されているためです。
テクフィデラの穴埋めとして期待されていたアデュヘルム(アデュカヌマブ)は、2021年には$3million(日本円で約3.6億円)しか売れておらず、苦しい状況が続いています。
アデュヘルムはもう少しは売れると思っていましたが、想定以上に苦戦していますね。
パイプライン
2021年の”Financial Results and Business Update”に記載されている情報に基づき、当社のパイプラインを見てみたいと思います。
Phase3を実施中の薬剤は、以下の9剤です。
- Lecanemab
- Tofersen
- Zuranolone-PPD
- Zuranolone-MDD
- BIIB093-LHI Stroke
- Dapirolizumab gegol
- BIIB059-SLE
- SB15(referencing EYLEA)
- BIIB800(referencing ACTEMRA)
その中で、Lecanemabはエーザイとの共同で開発が行われており、2022年はじめにFDAへの承認申請を完了しています。
パイプラインはしっかりありますので、将来性がある会社だと思いますが、パイプラインのほとんどはCNS領域に偏っています。
CNS領域は、医薬品開発の成功確率が低い領域でもありますので、バイオジェンのビジネスはハイリスク・ハイリターンな環境にあると、個人的には考えています。
数年前に、製薬メーカー各社が軒並みアルツハイマーの治験を中止しました。CNS領域はアンメットメディカルニーズが存在する一方で、開発の難易度が高い領域でもあります。
アルツハイマー病治療薬 アデュヘルム(アデュカヌマブ)
アデュカヌマブは、Neurimmune 社が元々は保有していましたが、バイオジェンに導出され、バイオジェンとエーザイ社で共同開発を行っていました。
アデュカヌマブはヒト遺伝子組換えモノクローナル抗体(mAb)であり、認知障害の兆候のない健康な高齢者、または進行が異常に遅い認知機能障害のある高齢者から採取した、非特定化 B 細胞ライブラリーに由来しています。
アミロイドβは、アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイド斑の主成分で、アデュカヌマブはアミロイドβを標的としますので、本当の意味でのアルツハイマー治療薬第1号です。
バイオジェン・エーザイの両社は、FDA(アメリカ)・EMA(EU)・PMDA(日本)にアデュカヌマブの承認申請を行いましたが、
- FDA:迅速承認(新たな治験を実施し、アデュカヌマブの臨床的有用性を示したのちに正式承認の予定)
- EMA:否定的見解を受け、申請取り下げ
- PMDA:承認見送り
となっています。
開発中止後の承認申請のなぜ
今更ながら、改めてアデュカヌマブの治験中止から承認申請までの経緯を振り返りたいと思います。
バイオジェン・エーザイの両社は以下の2試験を実施していましたが、独立データモニタリング委員会の無益性解析により、Primary endpointを達成することが困難との判断に至り、一旦は開発中止を決定しました。
試験デザイン:アデュカヌマブの2つの投与量群について有効性と安全性を評価する多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験
Clinical Trial.gov:https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02484547?term=aducanumab&draw=2&rank=6
【ENGAGE試験(1,647人)】
試験デザイン:アデュカヌマブの2つの投与量群について有効性と安全性を評価する多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験
Clinical Trial.gov:https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02477800?term=aducanumab&draw=1&rank=7
【無益性解析とは?】 これ以上臨床試験を継続しても試験治療の有効性を示すのが難しいと判断して臨床試験を早期に中止する必要があるかどうかを判断するための解析を実施する。ただし、無益性解析を実施する場合は、可能な限りその指標の意味合いや、結果の解釈に基づいた意思決定について、あらかじめプロトコールにて明示する。
http://www.jcog.jp/basic/policy/A_020_0010_22.pdf
EMERGE 試験と ENGAGE 試験の中止決定後に、新たに利用可能となったデータを追加し、バイオジェン・エーザイは解析を行いました。
- EMERGE試験では、無益解析時点よりも長い投与期間のデータが得られ、高用量群だけを見ると優位差が付いている
- ENGAGE 試験は主要評価項目を達成しなかったが、サブグループ解析においてはEMERGE 試験を支持する結果が出ていた
と両社は判断しました。
無益性解析により、一度は有効性のEndpointを達成することが困難であると判断され、開発中止となりましたが、高用量群ではアデュカヌマブの臨床的効果が高いとの判断により、前代未聞の承認申請劇となりました。
では、なぜ無益性解析と異なる結果が得られたのか?というと、データの追加によって高用量投与群の患者数が増えたことが主な要因です。
2つのPhase3試験は期間中に2度、より多くの患者に高用量を投与できるようプロトコルの変更が行われています。
ENGAGE試験より1ヵ月遅れてスタートしたEMERGE試験のほうがプロトコル変更の影響を強く受け、高用量投与群の比率が高まったことで、両試験の結果を分けたとバイオジェン・エーザイでは考えていたようです。
FDAから迅速承認を取得したものの…
FDAから迅速承認を取得しましたが、上述の通り、2021年には$3million(日本円で約3.6億円)しか売れていません。
2022/3/15のプレスリリースの通り、エーザイはアデュヘルムからの事実上の撤退が決定しています。
アデュカブマブの承認申請のニュースを聞いた時に、びっくりした人も多かったのではないでしょうか。
採用面接
バイオジェンの日本法人の社員数は200名前後であり、少数精鋭体制です。
そのため、各職種において採用面接ではかなり厳しく評価が行われているようです。
それに加えて、Study Managerの採用に関しては、最終面接(三次面接)ではグローバルチームとの英語面接が30分ほど設定されるようです。
英語力はさることながら、英語における交渉力等も見られるようですので、日ごろから英語の勉強をしておきましょう。
Study Managerの採用面接では、多くの会社で英語面接を取り入れていますね!その中でも、バイオジェンの英語面接はかなりガチな面接のようです。。。
年収・福利厚生
年収は、かなり高いようです。
キャッシュに加えてRSUも付きますので、キャッシュ+RSUで1,500万円以上は狙えるのではないでしょうか。
バイオジェンのような中小規模の会社はRSUがある会社が多く、株価上昇の恩恵が受けられれば一気に資産増加を狙えますので、魅力的な制度だと思います。
それに加え、バイオジェンには他社では見られないユニークな福利厚生があります。
- 定時以降に、オフィス内にあるバーでお酒飲み放題
- 夏季休暇の期間中に全社員に10万円支給
バイオジェンと同じぐらいの規模の会社は、福利厚生がほとんどなく、キャッシュ+RSUのみという会社が多いです。その中にあって、バイオジェンには非常にユニークな福利厚生がありますね!
まとめ
今日はバイオジェンについて記事を書いてみました。
今日の考察を纏めますと、バイオジェンは、
- 買収の噂が絶えない
- 単年で見ると決算指標はかなり良いが、各指標の推移は右肩下がりである(テクフィデラが後発品に浸食されているが、それを補填する製品が2022年時点では存在していない)
- パイプラインは豊富である
- アデュカヌマブは2021年に$3million(日本円で約3.6億円)しか売れておらず、苦戦を強いられている
- 職種によっては英語面接がある
- RSUも付与され、年収はかなり高い
- ユニークな福利厚生がある
となります。
パイプラインは豊富であるものの、その多くはCNS領域であり、医薬品開発の難易度が高いことを考えると、
- 将来性が豊かな会社である
- 私見ですが、ハイリスク・ハイリターンな印象を受ける
- ここ数年は我慢の年になる
と個人的には考えています。
なお、バイオジェンの中途採用の求人はたまに出ています。
当社に興味がある方は転職エージェントに登録をして、積極的に情報を取ってみてください。
では!
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