第一三共 大型化が期待されるDS-8201について解説!
ここ最近、大手製薬メーカー各社が抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC) の開発に力を入れておりますが、大型化が期待されるADCに第一三共の DS-8201があります。
ピーク時売上額は70億ドル(約7,700億円)と予想する証券会社もあるようですが、今日はDS-8201について書いて行こうと思います。
そもそも 抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)とはナンゾや?
ADCという単語自体は結構前から聞く言葉ですが、ADCについて正確に説明はできますか?
おそらく半分くらいの方は何となくこんな感じかな~という具合で、正確に説明できる方は少ないように思いますので、まずADCについて書いて行こうと思います。
ADCは以下のような構造になっており、 抗体にリンカーと呼ばれる部分を介して化学療法剤である薬物を結合したものです。
強力な化学療法剤をがん細胞を標的とする抗体に載せがん細胞へ運んでもらい、がんを効果的にたたくことを狙った薬剤です。
DS-8201とはどんなADCか?
DS-8201は抗体部分がトラスツズマブ、薬物部分がデルクステカンから構成されており、現在も治験が進行中です。
第一三共のHPによると、現在は乳がん・胃がん・大腸がん・非小細胞肺がん・膀胱がんの治験を実施中のようです。
https://www.daiichisankyo.co.jp/corporate/rd/pipeline/pdf/20191031_Pipeline_JP.pdf
2019/3/29には第一三共からプレスリリースが発表され、DS-8201はアストラゼネカと共同開発・販売提携をしていくようです。
https://www.daiichisankyo.co.jp/news/detail/006989.html
この発表があった2019/3/29には、第一三共の株価はストップ高となり、市場にはポジティブサプライズとして好感されておりました。
乳がん・膀胱がんを対象とした開発ではブリストル・マイヤーズスクイブと提携しており、ニボルマブ併用の治験を実施しているようです。
ブリストル・マイヤーズスクイブとの共同開発が発表されたのは2017/8/29であり、 ブリストルはアストラゼネカよりだいぶ前から目を付けていたようですが、アストラゼネカは良い意味で商売上手というか、流石だなという感じです。
USでは ブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定
標準的治療が不応又は不耐となったHER2陽性の再発・転移性乳がんや胃がん患者等を対象に、DS-8201の安全性、忍容性および予備的有効性を評価した日米共同第1相臨床試験の中間結果に基づき、DS-8201はUSでブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定されたいたようです。
日米共同第1相臨床試験の中間結果は、2017年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されたようで、発表された内容の簡単な概要が以下にリンクに記載されておりますので、ご参考までに。
https://www.daiichisankyo.co.jp/ir/calendar/files/005357/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%EF%BC%89.pdf
なお、HER2陽性の乳がん患者に対して、USで3rd lineの適応で承認が取れていますが、承認申請後2か月で承認を取得できたようですね。
第一三共のオンコロジーはこれから熱い!
第一三共は言わずと知れた日系大手製薬メーカーですが、5年前くらいまでは方向性が定まっておらず、インド後発品大手 ランバクシーを買収し、その後売却するなど、やや迷走している感が否めなかったと思います。
しかし、今まで蒔いてきたオンコロジーの種が着実に成長し、芽を出してきていると思います。
DS-8201は今後大型化が期待されており、是非頑張ってもらいたいところですが、株価も開発が成功することを織り込んでおりますので、絶対に失敗が許されないところだと思います。
私の勤務先は外資系製薬メーカーですが、日系製薬メーカーが自社の技術で良い薬剤を出すことは非常に喜ばしいことですので、今後もDS-8201に注視していこうと思います。
では!
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